遺言書の限界?遺留分ってなに?

 

今回は前回の続きとして、「遺留分」について更に学んでいきたいと思います。

はじめに、相続財産に対する各相続人の遺留分の割合を下記に記していきます。
子と配偶者が相続人・・・子が4分の1、配偶者が4分の1
父母と配偶者が相続人・・・配偶者が3分の1、父母が6分の1
兄弟姉妹と配偶者が相続人・・・配偶者が2分の1、兄弟姉妹は遺留分なし
※兄弟姉妹には遺留分の権利はありません。そのため遺言によって遺産を与えないようにすることも可能です。
配偶者のみが相続人・・・配偶者が2分の1
子のみが相続人・・・子が2分の1
直系尊属のみが相続人・・・直系尊属が3分の1
※直系尊属とは…父祖から子孫へと垂直につながる血族を直系血族といい、そのうち、自分よりも前の世代に属する者を「直系尊属」、自分よりも後の世代に属する者を「直系卑属」といいます。つまり、直系尊属とは、父母、祖父母、曾祖父母などのことです。
兄弟姉妹のみが相続人・・・兄弟姉妹には遺留分なし

続いて、遺留分請求の方法と期限について記していきます。
遺留分は、法定相続人が認められている正当な権利ですが、請求しなければ、遺留分の支払いを受けられることはありません。
つまり、遺留分権利者が実際に遺留分の返還を受けるには、遺留分の請求をする必要があるのです。
この請求を「遺留分減殺請求(いりゅうぶんげんさいせいきゅう)」といいます。
遺留分減殺請求をする方法には、特に法律上の制限はありません。
意思表示の方法は、口頭・電話・FAX・手紙など、いずれの方法でも効力が生じますが、
遺留分減殺請求には、期限(時効)がありますから、確実に証拠を残しておく必要があります。
そこで、後日の証拠を残すために、通常は「内容証明郵便」にて請求を行います。
遺留分は、法で定められた権利ですから、正当な事由がないかぎり、退けることはできません。
遺留分を請求できる期限は以下のとおりです。
・相続開始及び減殺すべき贈与や遺贈があったことを知った時から1年
・相続開始の時から10年
相続開始の時から10年以上たって相続等の事実を知ったとしても遺留分減殺請求はできないのでお気を付けください。

令和元年7月に40年ぶりに相続法が改正されました。
今回のテーマである「遺留分」に関する改正です。
従来の「遺留分減殺請求権」という言葉が、「遺留分侵害額請求権」に改められるなど、単に言葉の言い換えだけでなく、法律的な考え方が一新されることとなりました。
1 旧法による遺留分「減殺」請求権
旧法による遺留分減殺請求権は、遺留分の保全に必要な限度で遺贈・贈与などを失効させ、その限度で減殺請求された者の権利を遺留分権利者に帰属させることができる権利でした。
例えば、被相続人Aの遺産(甲不動産、乙不動産、丙不動産)の全てを長男Bが遺言で取得し、二男Cが長男Aに対して遺留分減殺請求をした場合、二男Cの遺留分4分の1の割合で遺言の効力が失効し、二男Cがその4分の1の所有権を取得します。
結果的に甲・乙・丙各不動産について長男Bが4分の3、二男Cが4分の1の所有権を有する「共有状態」が生じることになります。
2 新法による遺留分「侵害額」請求権
令和元年7月1日から新しくなった遺留分侵害額請求権は、行使の効果として、遺贈・贈与を失効させることはできず、「遺留分侵害額に相当する金銭の支払を請求できる」権利となっています。
例えば、被相続人Aの遺産(甲不動産、乙不動産、丙不動産)の全てを長男Bが遺言で取得し、二男Cが長男Aに対して遺留分侵害額請求をした場合、二男Cの遺留分4分の1の割合に相当する金銭債権(甲乙丙各不動産の評価額の4分の1)を取得します。
結果的に甲・乙・丙各不動産の所有者は長男甲のままで、二男Cは各不動産の評価額の4分の1に相当する金銭の支払いを長男甲から受けることができます。
見直しの理由を以下に記します。
(1) 事業承継のために会社で使用している不動産や会社の株式等を遺贈の目的とした場合に、遺留分減殺請求の結果として事業承継者以外の相続人との間で共有状態が発生すると、その後の円滑な事業承継・事業運営の妨げとなるため。
(2) 遺留分権利者の生活保障等を目的とする遺留分制度の趣旨に照らせば、遺留分権利者に遺留分に相当する金銭を得させることで十分であるため。 
【みなみ司法書士合同事務所ホームページ参照】

最後に、遺留分を侵害された相続人が、遺留分侵害額請求権を行使すると、遺留分を侵害している者(遺言によって相続財産を譲り受ける人)は、侵害している遺留分の額の金銭を遺留分権利者に支払わなければならず、支払う額をめぐって訴訟になるケースも多く見受けられます。
その為、遺産をめぐる争いを防ぐ意味でも、各相続人の遺留分を考慮したうえで遺言書を作成したほうがよいでしょう。


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